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性、所得というものも安定することになるでしょう。
今日、科学・技術・政治が、この食料の安全問題を取り上げなければいけないということを我々も認識しています。現在、理論的にはこの全世界の食料を確保する方法はあります。しかし、残念ながら、現実の問題を見てみますと非常に皮肉なことが世の中で起こっています。技術は非常に進展していますが、現実の農業生産性は、落ちているのです。
研究所の中では、農業の生産性が研究され、伸びてきておりますけれども、その反面、まだまだ多くの人々は貧しく飢えております。国連食料農業機構(FAO)の報告によりますと、8億人の人たちが栄養不良にあり、そのうち5歳以下の子供たちの数がなんと2億人にもなっているのです。
この最低生存レベルを保ちうる食料を、少なくとも確保しようと努力しているのですが、現在のところ、世界中すべての人の生存レベルを満たしてはいないのです。来年植える種を食べなければ今年をしのげないというのが、今日の状況であります。
この食料安全保障におきましても人口増加の圧力が、各国の予算に大きな圧力を与えています。実際、人口の急増によって、食料増産を支える農民の訓練、研修、農業技術また灌概の技術を向上していくために必要な予算がないのであります。このようなことが、実際に我々の食料の確保を難しくしているわけです。
私どもの人口増加が、環境及び天然資源に強い圧迫を与えているのです。現在のままではいけないということです。特に、食料の供給の現状と人口増加の不均衡が世界でいろいろな形で顕著に現れてきております。毎日毎日非常に多くの飢える子供たち、栄養不足の人たちが増え続けております。どのような形で私どもが、このような問題を解決していくのか、世界の人口に脅威を与えているこの食料問題をいかに解決していくかということが、検討されなければなりません。
人口、環境そして資源の相乗効果というものを図っていかなければなりませんし、そうでなければ我々はこの問題を解決することができません。
この観点から、「21世紀における女性、−平和と繁栄の戦略−」ということに少し言及したいと思います。
アジアにおきまして、21世紀に女性が大きな役割を果たすことは言うまでもありません。21世紀に向けての私どもの文化、そして社会に大きな発展と変化は単に物質的な変化に留まるものではありません。この変化は、価値の変化を伴います。この変化の担い手が女性です。アジア・太平洋の文化においては女性の役割が大きいということであります。
実際に、『メガ・トレンド2000』という本が今ベストセラーになっています。アジア太平洋及び世界各国での変革に焦点をあてた著書です。その中で女性の台頭と男性の支配力の弱体化がトレンドとして述べられております。

 

 

 

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